■農業のヨロコビ■

 一年半振りに農業の悦びの疑似体験である。無論ここのネタにするくらいだからゲームの話だ。その名もアストロノーカ。astro-は、他の語と結びついて「星、天体」の意味を表す接頭語である。すなわちアストロノーカとは、「星のノーカ」、あるいは「宇宙のノーカ」と訳すのが望ましい。ノーカと標記すると何語だか今イチ解かり難いが、日本語なんである。ノーカ=農家。てなわけで、農業シミュレーションなんである。
 前回プレイした時、ワタシは確実に野菜のレベルを上げられるという「強化種」というヤツに頼って一度目のクリアを果たした。そうして、エンディングの後に愕然としたのだ。クリア後に出現するコンクール、「P野菜コンクール」。P野菜とは、強化種に頼っていない、ピュアな野菜を交配して作った野菜、という意味である。たった一回でも使ってしまえば水泡に帰す。しかもとんでもない条件付き。
 前回プレイのデータは、強化種にまみれていた。だから今回、「強化種には頼らない」という誓いを立てて、イチからやり直しているのだ。これがもうとんでもなく難しい。どんなゲームでも二度目のプレイをする時は、大抵自分に手枷足枷を嵌めて苦しい条件下でやるのだが。ロマサガ3なんかであれば、初手から全員レイピア、とか。延々ひとり旅、とか。それも大概ツラいのだが、ピュア野菜はそれ以上にツラい。
 初めの内は畑がひとつしかない。交配用マッスィ〜ンのグレードが低い所為で交配に失敗しまくる。農業用ヘルパーロボットもバージョンアップしてないうちは交配の予想も外しまくってくれる。大事な種がどんどんクズ野菜になってしまう。どうにかこうにか交配を終えて畑に植える。大事に大事に育てて、明日にはもう収穫だって時に限って畑をバブーに荒らされ放題。

 そうだよそうなんだよ、バブーなんだよ。これはバブニー。ニクいあんちくしょうですな。

 前回のプレイの時には、「こいつらにオレ様の可愛い野菜を喰われてなるものか」ってんで、 トラップを結構緻密に考えて配置して、ヤツラを追い払っていたわけですよ。ところがね。バブーというヤツは進化しやがる。トラップを置けばそれに対応できる形に。追い払えば追い払っただけ、進化してしまう。そうして畑は荒らされ放題。あぁぁぁ。
 そんなわけで、今回取った作戦は。進化させないためにはどうすれば良いか。トラップを置かないことだ。バブーに喰われて傷物になっても、半値とは云え売れるのだ。半分の速度で金を貯める。貯めたお金で新しい畑を開墾するのだ。ふたつめの畑は、バブーに食われる危険性が格段に低くなる。みっつめ、よっつめとなれば、喰われないと云っても過言ではない。ひとつめ、ふたつめの畑にいる野菜達は、可哀想だが犠牲になってもらう。進化させないためにはそうするより無いのだ。運が良ければ喰われずに済むかもしれない。更に運が良ければバブーがゴールデン強化種を落としていってくれるだろう。そして。ここ一番と云うコンクールの時に、趣向を凝らしたトラップを仕掛けるのだ。殆ど進化していないバブーは、きっと全てのトラップに引っかかってくれることだろう。最後には見事に川に落ちてくれるだろう。芸術点は500点オーバーだ。うひひひひ。そんでここ一番のピュア条件野菜コンクールで優勝を飾るのだ。はーっはっはっは。

 でね。話は変わりますが(笑)。このゲームのメインはバブーとの対決なんですよ。かなりの時間費やすし。ゲームを進めるほどに、バブーが憎らしくなってくるんです。なにしろ、苦労して交配した可愛い野菜達を食べてしまうんだから。はい、ここ。ここ重要です。「野菜」が、「可愛い」と感じるようになるんです、このゲーム。交配に交配を重ねて、畑に植えて数日が過ぎ。収穫した時に野菜に対して感じるこの愛おしさ。

「そうか、これが農業の悦びと云うものか」

 そう思うわけです。

でもね。トラップバトルでバブーを捕まえてね。マイバブーを見に行くと。コイツが結構愛らしい仕草とかしてくれちゃうんですよ。小首を傾げたりしてるバブーの姿を見てると、
「なんだ、結構可愛いぢゃん」
とか、思ってしまうわけですわ。憎らしいはずなのに。
うーん。オトメゴコロの摩訶不思議(笑)。

農業のヨロコビ・了 08/January/1999

Tips

とんでもない条件:交配すると、野菜ごとにパラメータが変化する。この変化をどんどん進めると、究極な野菜ができるのである。

進化:バブーに羽根が生えて、せっかくのトラップを全部飛び越えられた時は、さすがに悲しい思いをした。

芸術点:バブーをいかに多くのトラップにかけたかによって、誰が採点してるんだか芸術点と云うものが算出される。これが、その時畑にいた野菜たちの「+α」の価値になるのである。コンクールでも優勝しやすい。

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